うつ病になったのは誰のせい?

うつ病の方に、うつ病になったのは、何のせいだと思う?とか
病気が治らないのは何のせいだと思う?とか話を聞くと
何とかのせいだとはっきり答えることが多いように思います。私の妻の場合も、そうでした。
妻の場合は、何か問題が起きると、家族のせいになることが多かったです。

これはなぜかというと、脳の性質によるものです。
脳は、不安を感じると、いま持ち合わせている情報や知識だけで、素早く解決しようとするからです。
そうすると、身近にいる家族がターゲットになってしまいます。

本当に家族が悪いのか?
本当のことは誰にも分からないのです。

ただ、確かに言えることは、うつ病の方の中ではそうなっているということです。
それだけが真実です。

物事を考えるとき、私たちは、過去の記憶を頼りにしています。
過去の記憶は、事実だと思っている方もいらっしゃるとは思いますが、実はそうでもないのです。

心理学の有名な実験があります。
実験の対象を2つのグループに分けて、同じ交通事故のビデオを見てもらいます。
数週間後に、それぞれのグループに質問をします。

1つのグループには、衝突でガラスは割れていましたか?と聞きます。
もうひとつのグループには、激突でガラスは割れていましたか?と聞きます。

そうすると、激突と聞かれた方はガラスは割れていたと答える率が上がるのです。
実際にはガラスは割れていませんでした。

このように、過去の記憶は、現在、今の都合に合わせて、作られてしまうことがあるのです。
これは、脳の特徴である、辻褄を合わせるという能力にに起因しています。

激突という言葉に合わせようとすると、ガラスは割れていたはずだと、無意識に判断されたわけです。
話をした本人には、ウソを言っているという意識は全くありません。
その人の中では、それは、真実として存在するからです。

過去を振り返れば、多かれ少なかれ、家族には問題があるものです。
親も未熟だったし、子どもも幼かったわけです。いろいろな間違いも当然のようにあるし
傷ついたこともあるし、傷つけたこともある。それがなければ家族ではないのかもしれません。

過去の記憶を、現在の不安で辛い精神状態でたどると、不安を解消するための材料として
都合よく記憶は変わってしまいます。

私が言いたいのは、うつ病の方が思い違いをしてるというのではありません。
これは、うつ病の方の中では、家族に起こった、もしくは自分に起こった真実でしかないということです。